2020年度センター試験古文問1を解説します。
問題1 (ア)(イ)(ウ)は短い文の解釈問題です。
このような短いタイプの解釈問題の解法の手順は
1.単語
2.文法
3.内容・文脈
の順に見ていきます。
後半にテクニックを1つ紹介しています。
(ア)ゆかしくおぼしめして
まずは単語から。
この傍線部を見てすぐに「ゆかし」という単語に目がいかなければなりません。
これは最頻出の重要単語中の重要単語です。
「ゆかし」とは、もともと「行かし」つまり、「行きたい」という意味です。
何か惹きつけられるようなものが存在し、その対象を行って確かめたいといった知的好奇心を表す語句です。そのため、意味は「見たい・知りたい・聞きたい・心惹かれる」といった意味になります。
すると、この時点で選択肢
①いぶかしくお思いになって
②もどかしくお思い申し上げて
④縁起が悪いとお思いになって
この3つは明らかに除外されます。「ゆかし」の意味が正しく表現されていないからです。
次に、文法的に探ります。「おぼしめす」という敬語表現を考えましょう。
「おぼしめす」は「おぼす」よりも敬意のレベルが高い尊敬語です。「お思いになる」と訳しておけば大丈夫でしょう。
すると、選択肢
⑤会いたいとお思い申し上げて
の「お思い申し上げて」という訳出は謙譲語の訳出です。
よって、残った選択肢
③知りたくお思いになって
が正解になります。
(イ)やをら
これはサービス問題です。
この単語を知らない受験生はいないと思います。
「やをら」は物事が静かに流れる様を意味する語句です。
ですから意味は「そっと・静かに」といった訳になります。
すると、語句の意味だけで選択肢が切れます。
①急いで
③かろうじて
④まじまじと
⑤そのまま
は明らかに除外されます。「やをら」の意味が正しく表現されていないからです。
よって、正解は②静かにとなります。
もしかすると、⑤そのままで悩んだ受験生もいるかもしれませんが、「そのまま」では、物事が流れていませんよね?原義は「物事が静かに流れる様」でしたから。
(ウ)重なれるあはひ
これは(ア)(イ)と比べるとやや考える必要があります。本番中、受験生は少し不安になったのではないでしょうか?
まず、単語で攻めにくいというのがあります。
解法の手順通り、単語勝負ができないときは、文法的に攻めるしかありません。
品詞分解をすると「重なれ/る/あはひ」ということで、助動詞「る」を見ます。
接続を見ると、「重なれ」は「ラ行四段活用動詞(重なる)の已然形」となっていることから、この「る」は完了存続の助動詞「り」の連体形であることが分かります。
ここで、学校ではほとんど習わないテクニックです。
傍線部の動詞が自動詞か他動詞かを見ます。
「重なれ」の言い切りの形は「重なる」ですから、この動詞は自動詞になります。
すると、ようやくここで選択肢、
②重ねた風情
⑤重ねている着こなし
は他動詞の訳出がされているで、除外対象です。
また、完了の助動詞「り」の訳出がされていない
①重なる様子
も除外対象です。
残った択肢
③重なった瞬間
④重なっている色合い
これらは、本文を見て、内容・文脈で攻めていきます。
すると、傍線部の次の文、「この世の人の染め出だしたるとも見えず、常の色とも見えぬさま、文目もげにめづらかなり」とあり、意味は「この世の人が染めたも思えない、普通の色ではないさまは、模様も本当に珍しい(すばらしい)。」とあることから、この部分の主語は傍線部であることを考えると、瞬間よりも色合いの方が適しているわけですね。
よって、正解は
④重なっている色合いとなります。
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